事業仕分けは民主党のショーだった

えっ?生活衛生営業指導センターが存続?

民主党のポーズだった事業仕分け

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 (こんなもの、ただのショーだったのだ!)

 

 昨年3月、第二回目の事業仕分けが行われ、私たちクリーニングに関わ る事業でも、全国生活衛生営業指導センターが廃止と決まった。この組織はクリーニング師の研修などを管轄するというが、最近はほとんどその名を聞くこともなかったので、組織としての存在価値があるものとは思えず、まあ廃止は自然の成り行きだった。

 ところが、この組織が存続されるという情報が入り、大変驚かされた。生活衛生営業指導センターは廃止されるのだろうか?存続されるのだろうか?

 

組合からの報告

 この話が出たのは、今年初め頃である。当社を提起訪問していた地元クリーニング組合の職員が、「民主党の太田和美議員が組合郡山支部の新年会に出席、その席で、生活衛生営業指導センターは存続すると語った」というのである。その後地震が発生、この問題は棚上げになっていた。

 私は事実確認をすべく太田和美議員のホームページにメールを出し、真意を聞いた。一週間後、秘書から返事が来た。

 

メールをありがとうございました。

国会で太田和美の秘書をしております○○と申します。 

全国生活衛生営業指導センターに関する件でお答え申し上げます。 

昨年の事業仕分けで同センターが実施するクリーニング師の研修が取り上げられ、平成4、5年ごろまでは67%あった受講率が、平成19年から21年にかけて32%まで下がってきている実態が問題となりました。こんなことなら研修もセンターも廃止してはどうかとなったわけです。 

それを受けて、厚労省の中にワーキングチームができ、センターと研修をどうするかの検討をし、今年の1月、最終報告がまとまりました。その結論は、センターと研修は存続するとのことでした。衣類の素材が変化し、クリーニングの技術も毎年のように変化しております。消費者の期待に応えるためにも研修は必要だし、今後2年間で受講率を大幅に上げるという改革案を条件に、研修を存続させることとなりました。研修の中身も受講率アップにつながるものに変えるそうです。今年度の研修は今月末から来月にかけて始まりますが、皆様の積極的な参加による研修の活性化に期待しているところです。 

太田和美も今後ともクリーニング業の健全な発展のため力を尽くしたいと考えておりますので、どうかご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

 ということで、存続す るというのは事実のようである。これは太田和美議員に問題があるのではなく、地元組合の新年会に来賓で招かれ、挨拶した中での発言である。秘書の連絡を読 む限り、この生活衛生営業指導センターの実態について全く理解しておらず、この様な返事になったものだと思われる。

 

無意味なクリーニング師研修制度

 ここで改めてクリーニング師研修制度の無意味さについて述べたいと思う。

 日本ではクリーニングの作業場を開設する際、必ずクリーニング師の資格が必要となる。しかし資格試験は、60年前の焼きアイロンを使用しての実技試験など、現代のクリーニングとはかけ離れた筆記、技能試験が行われる。そういう資格保持者に3年に1度研修を行わせようということだが、罰則規定がなく、大手は無視するので、研修の意味がない。

 事業仕分けでは32%が受講しているとのことで、私はむしろこの受講者の多さに驚いた。事実上誰も受けていないのではと思えたからである。ところが、零細な組合員達は結構受講しているとのことで、組合員達に招集をかけ、実行されているようだ。そうなると零細業者にますますの負担をかけ、かえって気の毒にすら思える。

 今日のクリーニング工場、作業場においては、資格の有無にかかわらずいろんな人々が作業している。クリーニング師のみの講習は意味がなく、また各社独自の研修、訓練は行われている。「クリーニング師」を研修させる意味は事実上あり得ない。諸外国には「クリーニング師」という資格も存在しない。現代に全くそぐわない制度は廃止するべきで、だから民主党政権になった登場した事業仕分けには国民の多くが賛辞を送ったのである。

 秘書からのメールには、「厚労省の中にワーキングチームができ……」なる一文があるが、これこそが大きな矛盾である。天下りは厚労省ら官僚の悪癖、その厚労省にワーキングチームをやらせたのでは、全く意味をなさないではないか。

 

結局ポーズだけだった民主党

 2009年の民主党政権奪取には、新しい日本が来ると、多くの有権者が期待をふくらませた。特に、天下り廃止が注目され、蓮舫氏らが舌鋒鋭く既存の天下り組織を廃止に追い込む「事業仕分け」は、ダラダラした自民党政権にウンザリしていた人々の溜飲を下げたものである。

 ところが、あっという間にボロが出始め、交代、内紛、スキャンダル、辞任と、以前の自民党時代を上回るトラブルがいつも紙面を飾るようになった。民主党議員達は、「勝てば官軍」と思っていたらしい。3,11震災後も首相の震災・原発対応を巡って連日国会は紛糾し、登場する議員達も暴言、失言、嘘などが目立つようになった。結局民主党は政権を奪っても何もできず、支持率は急降下している。被災地の人々は、この非常時に愚策を連発する政府に対し、憤りを通り越して呆れている有様だ。

 そういう民主党の中で 唯一評価された事業仕分けにおいて、廃止と決定されていながら、現在も継続中という事案が多いのだ。あれは何だったのかという気持ちである人は多いだろ う。生活衛生営業指導センターについても、よりによって天下りの甘い汁を吸い続けていた役人にワーキングチームを任せるなど、冗談もほどほどにしろといい たくなる。

結局、事業仕分けというのは民主党の、人気取りのためのポーズだったようだ。廃止と決まったほとんどの事案が現在も存続しているのがその証拠である。

 

存続する全国生活衛生営業指導センター

 結局、この問題はすべてが霧の中、何がなんだかわからないうちに「存続」となっている。それを組合の職員から聞かされるというのも大変不思議な話だった。

 個人的な感想を言えば、全国生活衛生営業指導センターに存在意義がないかといえば、この混沌としたクリーニング業界を整然と正確なコンプライアンスを持って指導していくというのなら、諸手を挙げて賛成したいと思う。しかし現実は、子分のような全ク連を召使いのように利用し、自らの「天下り」を容認させるばかりか、屍同然の全ク連を業界の代表に仕立て、見返りを与えているの が現実だ。

 クリーニング業者の側も、こういう行政の動きにただ何の抵抗もせず、 いうがままになっている。一部の組合では営業指導センター存続の活動を行ったと業界紙に記載されてあったが、そういう組合業者は本心で存続を希望していたのだろうか?ああいうクリーニング師研修を受講したがっていたのだろうか?業界紙には顔写真付きで営業指導センター存続の活動を行う業者が載っていたが、 一度、話を聞いてみたいものである。

また、この問題を全く無視している大手業者は、仮に今後、これに罰則規定が付いたらどう対応するつもりなのだろうか?それとも、「組合は隷属、大手業者は無視、役人の天下りは放置」という現在の状況を、最良の妥協点と見いだしているのだろうか?

「これはおかしい」と手を挙げる人はいないのか。クリーニング業者は、個人も大手も事なかれ主義者の集団のようだ。