銀幕いっぱいに溢れるウルトラ愛 シン・ウルトラマン鑑賞記

銀幕いっぱいに溢れるウルトラ愛 シン・ウルトラマン鑑賞記

 

 遂に話題のシン・ウルトラマンを見た。封切り初日に映画を見るのは生まれて初めてだ。待ちに待った映画だし、「シン・ゴジラ」がすごく良かったので期待していた。何度もネットに出てきた、煽るような予告編も気になった。

 映画館は米沢の映画館。なんと、55歳以上は700円も安く見られる!年齢が高くなって得をした初めてのことともなった。

 

 オープニングは例によってグニョグニョした画面の中から次第に文字が見えてくるウルトラQ以来のもの。しかし、出てきた文字は「シン・ゴジラ」だった。驚く観客の前に、銀幕はいきなり赤に染まり、「シン・ウルトラマン」と出る。あの効果音とともに・・・。1967年、ウルトラマン第一回放送で受けた衝撃を久々に受けた。ぐるぐる回って次第に浮き上がってくる文字、これは、ウルトラQに習って「ウルトラマン」と出るのだろうと思っていたら、「ウルトラQ」と出てきてビックリした。しかし、すぐにジャーン!という効果音とともにウルトラマンになる!これがまた繰り返された。子供の頃の衝撃が思い出された。

 

 どんな展開をするのかと思いきや、冒頭、あのウルトラQの音楽とともに、懐かしのウルトラQ怪獣が出てくる。最初のセットが第1話「ゴメスを倒せ!」そっくりだったのでええっ、まさかと思ったら、まさにTVの世界に最初にやってきた円谷ワールドの面々が登場、ゴメス、マンモスフラワー、ペギラ、ゴーガ(?)、ラルゲユウス、パゴスとかが「現代風」になってほんのわずかずつだが登場すると、予想外の出来事にこちらは心臓ドキドキだ。ウルトラQもやってくれたことに大変感激した。作者にとって、ウルトラマンはウルトラQに続くシリーズで深い関連があると認識しているのだろうか。だとしたら、私も全く同意見です。映画の中では、こういった怪獣(禍威獣)がたびたび出没することが、「禍特対(カトクタイ)」が結成される理由にもなっている。

 

 ところで、ここに出てくるウルトラマンにはあのカラータイマーが付いていない。3分のリミットを知らせるカラータイマーはウルトラマンの代名詞のようだが、考えてみれば、宇宙人なのに地球の時間を知らせるタイマーなんておかしい。子供達にウルトラマンの弱点をわかりやすく伝えたかったためにカラータイマーが付けられたそうだが、ウルトラマンのデザインを担当した成田亨氏の原案にはカラータイマーなどなく、他の関係者によってカラータイマーを付けられたときには成田氏は大変不愉快だったと聞いているが、オリジナルの良さを大切にしたということか。原点に帰り先入観なく最初からリメイクする。「シン・ゴジラ」にもそういう姿勢を感じたが、そこがまたいい。そういえば米津玄師によるテーマソング、「M八七」も、最初、ウルトラマンはM87星雲から来たという設定だったのだが、何かの機会に間違えられ、M78星雲になったとも聞いている。私も子供の頃、M87星雲と書かれた雑誌などを何度か見た記憶がある。知らない間にM78星雲になり、あれ、どうしたのかなと思った。ここにも原点回帰の姿勢が感じられる。

 

 当作品では冒頭、ウルトラQ怪獣が数頭登場、その中にはパゴスも加わっている。その後、ウルトラマンと闘う怪獣にはネロンガ、ガボラがいるが、禍特対によってこれらは同種、同類と判断される。それはそうですよね。元はみんな東宝のバラゴンだもの(ウルトラQ、ウルトラマン制作時には東宝から首を切り取ったバラゴンの着ぐるみを借り受け、その後首を創作して誕生した怪獣が複数いる)。これはウケ狙いか?作品はウルトラの世界にどっぷりと浸っている人々を楽しませてくれるようだ。

 

 さて、作品全般に関しては、原作(最初のウルトラマン)を大きく逸脱して新たなストーリーを模索するのではないかと思ったが、そうではなく、むしろ原作に忠実というか、ビックリするくらいに同じ場面が多い。それでも、新しさを感じさせる演出が大変嬉しい。それが最も顕著なのが、ザラブ星人が出てくる当たりである。ストーリーがほぼ、そのまんまであるばかりでなく、セリフも全く同じところもあり、ウルトラマンとにせウルトラマンの戦い方も、まるっきりコピーしているような感じだ。飛んで逃げようとするにせウルトラマンを本物のウルトラマンが至近距離からスペシウム光線を放って打ち落とし、ザラブ星人の正体がバレたり、にせウルトラマンを本物が空手チョップで脳天を叩いた後、ウルトラマンが手を痛がる場面まで忠実に再現されている。大変なウルトラ愛を感じるが、ここまでこだわると、作者はザラブ星人が大好きなのではないだろうかと思えてくる。闘いは大都会の真ん中で行われるが、映像は格段に進歩し、現代の東京上空を颯爽と飛ぶウルトラマンは、最初にウルトラマンを見てから半世紀が過ぎた私にも最高にかっこ良く思える。

 

 予告編では「メフィラス」の名詞の人物が出てくる。これも、初代ウルトラマンの原案に沿った展開といっていいだろう。改めてみてみると、戦い方も使ってる技なんか同じだったりする。そして、初代ウルトラマンではフジ隊員が巨大化するが、本作でも巨大化する人がいる!勿論、実際に善良な宇宙人がいたならこんな展開になるよなといった、現代的な視点も整っていて、初代ウルトラマンの、いまいちはっきりしないような部分、子供番組的な場面はかなり改善されている。とにかく全編に溢れるウルトラ愛は凄まじいものだ。原作を大切にして、そこに新たなあり方を盛り付けたような作品で、原作のウルトラマンを知っていればいるほど面白い作品ともいえる。

 

 作中、政治家が「禍威獣は日本にだけ現れる」という台詞(セリフ)を話す場面があるが、なんで禍威獣は日本にだけ現れるかというと、それは日本には円谷英二監督がいるからである。それ以上の理由はない。

 ラストシーン、映画は唐突に終了し、最後は米津玄師のテーマソングが流れ、スタッフがテロップで紹介されるのだが、そのときに、まだこの世界にとどまっていたいような気分になった。後ろ髪を引かれるような気持ちで映画館を後にした。独自の世界観は、私たちにとっては大変心地いい、素晴らしい空間であるようにも思えた。また何度か映画館に見に行きたくもなる。

 

 というわけで、「シン・ウルトラマン」は大変な傑作だったが、ここまでいい作品だと、ぜひ続編を、とも考えてしまう。「シン・ウルトラマン2」である。今回のストーリーからして続編は難しいかも知れないが、原作に非常に忠実な作品であったからには、まだまだたくさんある魅力たっぷりのプロットを、このスタッフで実現して欲しい。

 たとえば、ウルトラマン最大の宿敵であるバルタン星人は今回登場していない。シン・ウルトラマンを見る限り、バルタンはかなり面白いプロットが完成しそうだ。20億3000万人のバルタン星人地球移住計画など、盛り上がりそうだ。その他にも、人気怪獣であるレッドキングやゴモラも登場して欲しいし、ジャミラ、ダダなどもかなり興味深いテーマを提供できるのではないだろうか。そういう作品を想像するだけでもワクワクしてくる。

 

 さらには、「シン・ウルトラセブン」も期待したい。異星人の侵略をテーマにした「ウルトラセブン」は、より面白いストーリーが展開できそうに感じる。ゴジラやウルトラマンを蘇らせた庵野氏や樋口氏がさらなる展開を見せてくれることを期待している。

 

 これだけの傑作、須賀川市ではTETTE当たりで上映会を開いてみてはどうだろうか?特に子供に見せたい気がする。子供向きではないが、背伸びして見るこういう作品は、子供達に大きな影響をもたらすと思う。

 

※なお、これは個人の感想であり、何の先入観もなく、映画を見た印象を書いております