つげ義春本 六選

つげ義春本 六選

ねじ式

  つげ義春は基本的に漫画家だが、文章も面白く、その書籍もなかなかのものである。漫画、文章、挿し絵、そして写真と表現の幅が広い人だ。私もつげ作品にはまったのは、漫画というよりは「つげ義春旅日記」という旺文社から出た文庫だった。そういったつげ義春本から、これは、という六つの書籍を紹介したい。

 つげ義春と僕

tugeyoshiharuと僕

興味を持った「つげ義春旅日記」という文庫の内容は、出典がほとんどこの本である。いろいろな旅日記とそれに伴う挿し絵と写真が大変魅力的である。非情にノスタルジックな温泉旅行であり、懐かしさを感じさせる。自分も知る温泉につげ義春が行き感想を述べるのはなんとも面白い。また、その頃の雰囲気も十分に感じさせる。温泉は現在よりも私たちの生活に密着しており、娯楽やレジャーというよりは、生活に欠かせないもの出会ったようにも思える。

 そして、注目すべきは夢日記である。夢に見たことを書いたものだが、幻想的な世界が大変素晴らしく、私もまねて書いたこともある。夢に見たものをこんなにあからさまに表現した文章は見たことがない。ファンタジックで、メランコリックな世界が延々と広がっていく。つげ義春の魅力がいっぱい詰まった書籍である。最後に二編、漫画が登場する。

 漫画だけではない、つげ義春の本当の魅力がわかる書籍。

 

 

つげ義春日記(講談社 1983年12月15日初版)

つげ義春日記

 昭和50年11月1日から昭和55年9月28日にいたる約五年間の、つげ義春の「通常の」日記。旅行記とかではなく、全くの日常である。

 妻の病気を心配したり、子供が泣くのを気にしたりと、普通の人の印象もあるが、一番興味深いのは本人の鬱病治療である。医者に聞いた対処方法や治療の様子を実に丁寧に描写している。まるで、自分が医者から指示を受けているようだ。そんな調子の悪い時期にもかかわらず、丁寧に日記を付けるとはさすがにつげ義春である。

 つげ義春ほどの人となると、何気ない普段に日記でさえ、非情に興味深い、味わい深い文章となることがわかる。

 

 

貧困旅行記(晶文社 1991年9月30日初版)

 つげ義春貧困旅行記

 つげ義春に旅行記は多いが、これは書き下ろしが多く、まだ読んでいない旅行記がたくさん載せられている。発表時期が漫画を描かなくなった時期だけに、これはつげの新作のようで嬉しい。

 しかしそこはつげらしく、ただの旅行記にはなっていないのがいい。とんでもない描写もあって驚かされるが、それこそがこの作家の魅力だろう。

 

つげ義春幻想紀行(立風書房 1998年2月20日初版)

 権藤晋著

tugeyoshiharu幻想紀行

 長くつげとの関わりのあった筆者が、つげ作品に登場する温泉を次々と訪ねていく旅行記。岩瀬湯本温泉、二岐温泉ももちろん入っている。最後につげとの31ページにわたる対談掲載が付いている。

  

COMICばくとつげ義春(福武書店 1989年8月5日初版)

  夜久弘著

COMICばくとつげ義春

 1980年代、つげ義春をメインにした漫画雑誌が登場した。それがCOMICばくである。その雑誌の編者によるまあ苦労話みたいな書籍だが、なかなか興味深い。

 COMICばくは季刊誌で、年に4回、3ヶ月に一回しか発行されないが、寡作のつげにはそれすらつらい。なんとかおだてて描かせようとする筆者の奮闘がなかなか泣かせる。この時期には別離(上下巻)、ある無名作家、そして、全5話からなる無能の人が発表されているのだから、筆者が大変意義のある仕事をしたのだと思うが、つげさんがなかなかいうことを聞かなかったり、販売数がどんどん減っていったりして気苦労もかなりだったようだ。なんだか読んでいて、こっちまで苦労しているような気がする。結構読み応えのある本である。なんといってもつげ義春がエースの本なのだから、表紙を描いて欲しいと頼むが、「私の絵は表紙向きではない」と拒否されたりするのはかわいそう。

 

 

 

 

つげ義春の温泉(カタログハウス 2003年2月10日初版)

 つげ義春の温泉

 この書籍が出版された時期、なぜか通販雑誌のカタログハウスにつげ作品が掲載されていた。通販とつげ義春というのは奇妙な組み合わせだが、妻が取り寄せている雑誌につげ義春作品が載っているのに驚いた方も多いのだろう。そういうわけでカタログハウスから出版された書籍である。巻末に登場温泉の連絡先リストがあり、現在でも名作に登場した温泉に入れるようになっている。秘湯も商品なわけね。その辺は通販雑誌らしいところだ。内容はほとんど過去の作品ばかりだが、そこだけは感心した。カタログハウスに作品を載せて、読者から「ぜひ出てきた温泉に行ってみたい」という声が多かったのだろうか?