地震日記:5月16日~5月31日

5月16日~31日

 

5月16日(月)

 日曜日から業界団体の会合が二つあり、昨日から上京していた。3月11日の地震以来、初めての上京だった。

 4月にもあったのだが、直前に震度5以上が6回も来たので見送った。今回は何もなくて良かった。3月11日も、たまたま車で行ったから良かったものの(出張で金沢)、もし、電車で出かけていたら、最低3日は帰ることができなかっただろう。

 久々の東京は薄暗かった。節電の影響である。駅のエスカレーターも止まり、あらゆるところで節電が行き届き、その節電に対する協力姿勢たるや感心させられた。日本人の一致協力する姿勢はほんとに素晴らしいものの様だ。

 昨晩は編集委員会メンバーらと少し飲んだが、飲み屋さんで、これみよがしに「福島から来ましたー!」などと言ってみたが、特に問題はなかった。遠ざけられるとかはない。

 本日も会合だったが、やはりみんなこちらを心配されていたので、それに対し感謝の言葉を申し上げた。団体からお見舞いなどもいただいている。

 会議は全く普通に進められたが、計画停電などで、関東地方の業者もかなり売り上げに影響を受けているとのことだった。クリーニング業界は運営が脆弱で、些細なことが売り上げダウンにつながってしまう。地震と原発の問題がある我々はある程度当然だが、計画停電が売り上げに与える影響はかなり大きいようだ。ほかの産業もそうなのだろう。

 

 久々に上京して感じるのは、東京全体が節電に対し、かなりの努力をしている姿を目の当たりにし、頭が下がった。私たちは、田舎で何もないから原発を作られ、バカにされているのだと思っていた。ところが、いろいろなところに節電の工夫がされ、身を削るような苦心をしているのである。これでは、「あんたたちの電気のおかげで」などといえない。いや、悪いのは一部の人々だけで、東京住民もまた犠牲者なのだと思った。

 そう考えると、田舎でだんだん目立ってきた暴走族とかは厳しく取り締まってほしい。福島県などは、原発の放射能の問題を除けば、むしろ都会よりも恵まれている。やはり私たちもそれなりに厳しい姿勢を持たなければならないのではないか。上京して、現実を知った気がする。

 新幹線は、普通のダイヤに戻った。在来線もそのようだ。

 

5月17日(火)

 

クレーマーの手紙

 昨日東京から帰ってきたが、川崎の業者から頼まれた「クレーマーに送る手紙」を作成してFAXで送った。こっちが被災していようとも、クレーマーが全国どこにでも登場し、そのたびにどこかの業者が助けを求めてくる。気持ちはわかるが、ちょっと頼りすぎだと思う。

 東京では、電話で、「そういう場合はこれこれこういう内容の手紙を送れば大丈夫」みたいな話をしたのだが、「じゃあ、その文章作ってくださいよ」ということになった。肝心なところは人に頼る、というのはずるいが、いかにもクリーニング業者の発想だ。こういう依存体質が、建築基準法問題のような「気が付いたらみんな違反していた」のような事態を引き起こすのである。

 

国土交通省のクレーム

 日曜日に行われた会合で、局長から、「当方の機関誌で、機械業者のTが、紙面に入れた広告のことで、クレームを付けてきた」。と伝えた。何でも、国土交通省から文句をいわれたという。

 紙面の広告は、Tが建築基準法問題対策として販売している「ソルカンドライ」の洗濯機の宣伝であるが、その中の、「第一種住宅地域でも大丈夫!」という文句が国土交通省の逆鱗に触れたらしい。ソルカンだから大丈夫ということではなく、建築基準法では様々な制約があるのに、この機種を導入したらすべてが許されるというような記載は気に入らないということらしい。

 私からしたら、そういう状況を長年にわたって放置していたのは、いったいどこのどいつなんだと言いたい。そんな些細なことでケチをつけてどうするのか。

 この紙面は本来は全協会員の機関誌なのだが、建築基準法問題で民主党議員がこの問題に絡んできて以来、政治や行政にも配られるようになった。

 この広告に関しては、内容を我々が作ったわけではないので、私たちには何ら責任はない。東染としては、石油系溶剤の規制が強まる今こそソルカンドライの売り時だとして宣伝したいのだろうが、国土交通省としては、「おまえら、あんまり調子に乗るなよ」ということだろうか?

 なお、この記事についてTは、「これは、編集委員長である私がわざと国土交通省に送りつけたのではないか」などとも言われているらしい。これも冗談ではない。ソルカンドライはそんな名前で呼ぶのはクリーニング業界だけで、本当は「1.1.1.3.3-ペンタフルオロブタン」といい、紛れもない温室効果ガスである。結局、Tもすねに傷を持つ身なのでそんなことを言ってくるのだろう。

 

ソルカンドライは本当か?

 まあ、こういう問題が起こるわけは、前にも書いたが、私は昨年からクリーニング業界のいろいろな問題を取り上げ、本を二冊も書いたりして盛り上がっていたのだが、地震と東電問題でプッツリ切れてしまっている。だんだん復帰しているので、徐々に活動を再開しているところだ。

 石油系溶剤の代替として登場した溶剤、通称「ソルカンドライ」は、前にも書いたように本当は1.1.1.3.3-ペンタフルオロブタンという。石油系溶剤の不正使用で摘発された業者はすぐにこれに換え、「エコ溶剤」などと宣伝しているが、実は温室効果ガスであることは前にも述べている。

 ところが、震災前に白河市の業者から聞いた話では、この溶剤は温室効果ガスどころか、生物の生態系にも影響を与えるものだというのでビックリしてしまった。そんな話を聞いていたところに、あの地震が来たというわけだ。

 日本経済新聞にさえ「エコ溶剤」と、書かれるものが、本当は人体に有害だとしたら大変だ。私は白河の業者にその情報を伝えた薬品会社(シミ抜きの薬品)に連絡し、ことの次第を聞いた。

 彼らが事前に送ってきた書類には、1.1.1.3.3-ペンタフルオロブタンではなく、別のものが人体に有害であるという朝日新聞の記事が付いていた。なんだ、全然別物じゃないかと思って電話したが、そこの話では(担当者は前と違っていた)、「1.1.1.3.3-ペンタフルオロブタンは温室効果ガスではあるものの、人体に直接の害はない。しかし、値段が高く、KB値(油脂溶解力を示す単位)が低いという弱点がある。これをそのまま使用している分には問題がないが、価格が高く、汚れも落ちないという弱点を補うため、もしかしたら、1.1.1.3.3-ペンタフルオロブタンではなく、別の溶剤を使用している業者もいるのではないか」という仰天情報をいわれた。

 ええっ、それはとんでもないことだ。エコ溶剤などといいながら、実は違う溶剤を使用しているというのか?だが、確かに腑に落ちないことはいくつかある。いくつか事例を挙げると、

○クリーニング業界では「ソルカンドライ」という名前しか登場せず、「ペンタフルオロブタン」などと言われたことがない。つまり中身は勝手に変換できる。

○価格が高く、低価格の業者では無理といわれていたのに、建築基準法で不正業者達の行為が発覚以来、低価格の業者はこれを使用し、価格もそのままにしている。普通にやっていれば採算に合うのだろうか。

○先日、提灯記事の問題で日本クリーニング新聞の編集長とやり合ったとき、向こうから「週刊金曜日でソルカンの悪口を言っているだろう」と言われた。もし中傷だというなら堂々と抗議すればいいのに、それもない。何かやましい事情があるのではないか。

 この件はまた別の機会にでも調査してみたい。

 

 

5月18日(水)

 

メルトダウン

 ちょっと前のニュースだが、地震発生2,3時間後にはメルトダウンが始まっていたということだった。そうすると私が金沢から焦って車を飛ばし、故郷へ帰ろうとしていた頃には既にメルトダウン状態だったということになる。さらにその数時間後には枝野官房長官が「安全です」などと言っているわけだ。

 原発に関しては今回の事件で詳しくなったが、「メルトダウン」という言葉自体は誰でも以前から知っていたと思う。原発の危険性を表す言葉として、以前の事故(スリーマイルとか)や映画で有名だ。

 東電の不透明さ、隠蔽ということをいわれてきたが、これが一番その隠蔽体質を表していると思う。なんだ、最初からじゃないか。これでは信用できない。

 もっとも、大地震で混乱している時期にメルトダウンなどといわれたら、大パニックが起きていたに違いない。情報を小出しにしたのは、混乱を避けるためなのだろうか?

 

当社の会議

 本日は朝から自社の須賀川地区エリア会議が行われている。私は特に参加せず、最後に挨拶するくらいだが、地震の影響が強く感じられ、大変興味深く聞いていた。

 冒頭、マネージャーの挨拶があったが、「こうやってみんながまた集まることができて本当に嬉しい」と涙ながらに語った。泣くほどのことなのだ・・・。仕事ができることが嬉しいと言ってもらえることは、社長にとっては感激である。同時に、従業員が自信や原発の被害に大変不安を持っていて、仕事が休みになることをかなり恐れているような印象である。数名の代表がやはり涙を見せた。ここは社長として、従業員の不安を取り除くことが必要だ。

 この地震で当方が一番マイナスの影響を受けたのは、取引先のスーパーなどがみんなボコボコ壊れ、しばらく営業ができなかった(今でも再開しないところもある)ためにその間の売上がなくなってしまったことである。各店舗の店長が話したが、工場が動いているのに、自分の店舗が営業できないということが相当悔しかった様だ。

 

呉越同舟

 前から浜通りと、中通り、会津の人はそんなにうまくいかないといっていたが、本日のネットの産経新聞では、その辺のことが書いてあった。中通りの人が、「浪江町の人が東電の社長に土下座させていたというが、今までさんざん恩恵を受けていたのに、土下座させるなんてとんでもない」というのである。先日の日曜日に行われたクリーニング組合の県南役員会でも、「土下座しろ、などというのは福島県民の品位が下がる」と怒っていた人もいた。

 確かにそうかも知れないが、二ヶ月も自宅を離れ、こっちが心配になってボランティアクリーニングをやるくらいに不便な生活を強いられている人が怒り心頭なのはむしろ当然。精神的に平常でいられるはずがない。そういう人たちの気持ちもわかってやらないといけない。

 それから、産経新聞の記事はちょっとヤラセ臭いと思う。原発で恩恵を受けている人がいても、それは県民の、ほんの一部。そんなことでさんざん恩恵を受けていたなどと、誰もわからない。「恩恵を受けていた」としても、限られた職種、危険な職種に就いていたわけで、他の県民にとってはほとんど気が付かないことではないか。そのように感じている県民はごく少数であるだろう。意味を解さない、作られた記事という気がした。

 

5月20日(金)

 

出張

 昨日からまた上京していた。業界会合に出席。この会は必ず出ているが、3月は中止、4月は開催されたが、余震で私は欠席した。

 やはりみんなから地震のことばかり聞かれた。みんなそれぞれに自分の意見を持っており、「福島第一原発は津波でなく地震で故障した」、「さっさと始まっていたメルトダウンを報道しなかった大新聞やNHKはずるい」などと言われた。

 前回の出張で気が付かなかったのだが、山手線が照明を消して走っていた。真っ暗でホームに入ってきたのにはビックリした。いろいろ節約をしている行為には感心させられる。

 宿泊先は前回と同様、大崎の「N・イン」。チェックインの時に男性スタッフから「いらっしゃいませ、鈴木様」といわれた。素晴らしい接客である。料金も、震災地特別割引で安かった。

 

研修生

 クリーニング業者は外国人研修生を受け入れ、働かせていることが多い。特に東京、大阪といった大都市ではクリーニング業に人が集まらず、外国人に頼っている。

 しかし、原発事故により大半は帰国してしまった。東京や大阪の研修生でさえ、帰っているので、結構困っている業者も多いらしい。研修生は実質的に「研修」ではなく、事実上ことごとく「労働」なので、それがいなくなるのは困るのである。このように原発問題は、クリーニング業者の労働力をも奪っているのである。もっとも、その行為自体が合法かどうか怪しいが・・・。

 こういった研修生受け入れの元締めの一人が東北にいる。業界では評判が良くない。ちょうちん記事を連発する業界紙に登場、「当社の研修生は、みんなここでがんばると言って、帰らない」などという記事が出ていたが、会議の参加者達からは、「あれは、もし帰ったら一切金は払わないぞと脅されているんだ」などという声が上がっていた。

 

田圃

 帰りに新幹線に乗ったが(各駅停車の遅いもの)、グリーン車以外はみんな自由席だった。チケットを買うとき、私はてっきり指定席が満席なのだと思ってグリーン車を買った。前の席には白人が乗っていた。那須塩原で降りたが、何か原発と関係のある人なのだろうか?

 新白河で新幹線を降り、在来線で須賀川に帰った。窓越しに田植えされたばかりの、坊主頭の様な田圃がたくさん見られた。こうやって今年もちゃんと米を作っている。身内に配るのだろうか?

 

 聞いた話では、この震災で結構飼い犬が保健所に連れて行かれているという。殺処分するのかと思ったら、2年くらいはそのままにしてあるのだそうだ。飼い主と離ればなれになってしまっていることを考慮しているんだろう。

 クリーニングは管轄が厚生労働省なので、保健所と接することが多いが、一般クリーニングで衛生上の問題が発生するとは考えにくく、事実何十年間もそのような問題は発生していない。食品衛生に関しても、事後処理するだけで、前にも書いたが午後5時以降に開店する店には何があっても動かないし、保健所はなんのためにあるのか、と思っているが、犬には優しいようだ。感心した。

 

地震

 最近はだいぶ余震も少なくなったが、今日は何度か震度3までの地震がある。いつもより地震が多くなった。大きいのがまた来るのでは・・・と家族が心配している。

 

5月22日(日)

 

 郡山市の同級生からかなり悲観的な連絡を受けた。郡山市では変なデマが飛び交い、小中学校の生徒数が900人も減ったという。やはり郡山は放射線量が上がっている地域も多いので、我々須賀川市民よりも敏感なのかも知れない。

 

5月23日(月)

 

会社の売上

 明日、会社で月に一度の会議があるが、その前に会計事務所が来て、今期の売り上げなど成績をみたところ・・・今期はとにかく地震によって売り上げダウンが激しく、3月などは本社が前年比50%ダウン、郡山地区が40%ダウン、会津でも30%ダウンなどふるわなかったと思われたのだが、4月の売り上げがそれなりに良く、5月の推移もとりあえず順調とあって、もしかすると(あくまで仮定の話だが)、今期は黒字に持っていけるかも知れない。

 先週、須賀川地区会議では「営業できて良かった」と涙を流す従業員がいた。地震の翌日にあってもみんな出社して片づけをしていた。郡山地区で行方不明になり、安否を心配していた従業員は、店舗開店時間になったらそこにいて、「いらっしゃいませ」とやられ、当社幹部が仰天した。こういう人たちに、この危機を乗り切ろうとがんばっている人たちに、せめて少しでもボーナスぐらいは出したい、という希望を叶えられたら社長としては最高の喜びである。そんなことだけで、ウキウキしてしまう。

 今後、放射能や人口減少の問題などにどうやって対処していくかと考えれば大変だが、こんな危機を迎えているときに、黒字で乗り越えられたら大きな自信になるだろう。できれば実現したいものである。

 

5月24日(火)

 

会社の会議

 本日は月に一度の定例会議が行われた。昨日記載の通り、成績発表などでは、4月が持ち直し、この震災にもかかわらず良好であることが発表された。まずはそのことを喜びたい。

 同業他社のことなどが話題にあがったが、震災後、燃料が入ってこないなどの不安があったため、他社では従業員をかなり解雇することがあったらしい。商工会議所でも、いったん解雇や休業扱いにして失業手当をもらう方法を薦めていたのも事実だ。

 しかし、それはあくまで会社が最終段階に来ている場合の処置。当社ではそれはやらず、むしろ3月度の給与を2月度の額と同額とするなどしたが、結果的にはそれは成功したようだ。これからどうなるかわからないので、とりあえず解雇します、というのでは、あまりにも無責任すぎる。他の会社は、みんなこのままダメになると思っていたのだろうか?自画自賛のようだが、緊急事態にこそ、人間の度量が試される気がする。だいたい、「地震だからクビです」って言えないだろう。

 

須賀川市民の避難

 隣の郡山市では、この土地を離れ、避難している人が多いらしいが、須賀川市はそういうことがなく、やはり古い町は故郷を離れない(離れようがない)のだと思っていた。

 ところが、町中のお菓子屋さんがおばあちゃんを残し、夫婦と子供たちで長野県に引っ越したという話が話題となっている。遂に、須賀川の市街地にも避難者が出たか・・・。ここは婿取りで、原発から20キロちょっと位に故郷のある主人がやっていた。非常に前向きな人で次々と新しいお菓子を考え出し、たいしたものだと思っていた。同世代なので青年会議所時代に一緒に活動したこともある。

 そういう人でも、引っ越すのか・・・。この辺は放射線量があまり高くない。それでも避難するのは、政府の発表がもはや信用できないということである。そういう動きが増えてくると困る。

 須賀川はかつて商店街が栄えた街なので、そういう人たちが現在でも一家言持っているという雰囲気がある。その一角が崩れたという印象だ。

 

5月28日(土)

 

昨日は須賀川経営者協会の総会だった。会場はやはり唯一震災を免れた宴会場。震災以降、こういう会合への出席率は高い。みんなよりどころを求め、情報を集めたい様だ。

参加者からは、「原発問題は本当に深刻。福島を特区として扱って欲しい」という意見が出た。確かに、小さい子供を抱える一家が離れていく地域であっては問題だ。人災である以上、何かの特権が欲しいところだ。東京当たりの人たちに節電で苦しい思いをさせるよりは、はるかに効果があるだろう。

 

ホテル再開

 参加者の中に、ホテルT社長がいた。ここは玄葉光一郎のお母さんの実家である。須賀川市街地のホテルは3つあり、いずれも地震で大きなダメージを受け、現在もクローズしているが、みんなの前で、ホテル再興を発表した。来週月曜、5月30日から宿泊部門が再開するという。ところが、ボイラーは復旧せずお湯が出ない状態での再開とのことだ。それでも再開して欲しいとの要望が強いという。

 またトラヤ以外の残り二つのオーナー、Aが、「お盆前には再開したい」と語った。前に7月中、といっていたのでやや遅れるようだ。

 水風呂状態でのホテル再開には、とにかく宿泊施設が不足しているという事情がある。郡山市、福島市のホテルはどこも満室状態、いてもたってもいられないのだ。

 

きゅうり天王

 参加者の中に「きゅうり天王祭」の主催者がいた。

 須賀川市のお祭りには松明あかしなど独特なものがあるが、市民なら誰でも知っていて、一般には意外と知られていないものに「きゅうり天王」がある。須賀川市はきゅうりの出荷数全国一というきゅうり産地。そこで昔からこんなお祭りがある。市民はきゅうり二本を持って天狗のような「きゅうり天王」の奉られた祭壇へそれを奉納する。そうすると別な一本が返されるという。街中には長い露天の店が並び、いつも盛況な祭りである。

 長い歴史を持つこの祭りに、おそらくは最大の危機が訪れた。放射性物質という大敵に、「きゅうり天王」はどう闘うのだろうか?注目される。

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5月29日(日)

 

クリーニング組合総会

本日は日曜ながら、福島市でクリーニング組合の総会が行われた。組合は正式には福島県クリーニング生活衛生同業組合といい、唯一の厚生労働省認可団体である。

 毎年一度、どこかの温泉旅館を貸し切って行われ、参加者も年寄りばかりなのでみんな温泉に入るのを楽しみにしているのだが、今回は震災の影響で組合事務所で行われた。高齢者ばかりだが、今日ばかりは決して浮かれた気分で来ているのではないということだ。しかし、定刻(午後1時)になっても会津地区、小名浜地区の代表は現れず、やはり若干間の抜けたところは否めない。

 最初に会長の挨拶があった。現在の会長は郡山市熱海の方で、普段よりは話のわかる方で、二年前には安売り業者の二重価格を私が相談して行政指導させたこともある。話は当然、今回の震災の影響から始まったが、原発から半径20キロ以内には15名、20~30キロ以内には14名の組合員が存在するとのころ。この人たちには会費無料など減免措置が執られている。本県組合員に宮城、岩手のような犠牲者はおらず、その点は幸いだった。

 私は滅多に発言しないが、今回は飛ばした。決算決議の際、「親会である全ク連に支払われている金額は、決算の合計金額の三分の一にも相当する。これ以外にもクリーニング・ギフト券の売り上げを全額上納している。いくらなんでも親会に払いすぎていないか?」と質問した。これに対しては、「親会の大半は人件費であり、負担を軽くするため、今後も運動していく」とのことだった。最近、各都道府県地域の組合があまりに負担の多い親会のあり方に苦言を呈しているので、今後動きがあればいい。

 

クリーニングの不正を糾弾

 そして、最後には事前に連絡しておいた、「昨今のクリーニング業界の不正行為」である。近年、安売りクリーニング業者に価格を安く見せ、いろいろな手段で追加料金を徴収する方法があるが、いくつか法律に抵触するものがあるし、モラルの上でも好ましくない。これを組合名で行政に対し、このような好ましくないことは指導していただきたいと言ってもらえないか、というわけである。

 これは事前に県南総会で私が話を出し、他の組合員から、そういうことならぜひ総会で言うべきだ、と提案されていたことである。

 こういった行為は、ここの会場にいる様な組合員ではなく、安売り業者達の間で行われている「裏テク」である。結局、組合が高齢者ばかりでボンヤリしている間に、安売り業者たちがやりたい放題だったわけだが、それにしても法律に抵触するようなマネをシャアシャアとやってくれるのには呆れてしまう。これも建築基準法問題同様、悪しき業界の不正行為である。

 珍しく情熱的に説明したが、聞いていた人たちは結構「知らなかった」という人が多く、「最初の客だけ丁寧にやっているというのは本当か、私はいわき地区だが、どの業者がやっているのか?」などと質問する人もいて、かなり感心を引いた。最後は、理事長がこの問題を行政に提出し、行政からの監督指導を仰ぐという理事長の承認を得て、なんと参加者たちから拍手があがった。なんだ、じいちゃん達、いい人じゃないか!

 実は、建築基準法問題の際にもこの理事長に協力を仰ぎ、「不法な手段を使って会津に工場を作った悪質業者を摘発しましょう」と頼んだ。ところがそのときには「やぶ蛇になっては困る」と途中で降りられた。組合員の中には悪意はないものの、違反状態の業者がいたのである。今回のような問題は安売り業者のゴマカシばっかりだから、組合の業者がやってるようには思えないし(都会だと別だが)、実際法律違反でもあるわけで、そういうことが行政によって指導や是正勧告を受けるようになれば、組合の業者達は安売り業者の勢いが弱くなり、大いに助かるのではないだろうか?地域の組合業者は、いろいろ軋轢はあったものの、決して悪い人たちではないのだから、今後はうまくやっていければ嬉しい。

 しかしみんな、「知らなかった」というのには驚いた。参加者の中に一人だけ準大手みたいな人がいて、私の発言を苦笑いして聞いていた。法定認可団体が知らないから、やりたい放題なのだろう。理事長が動いてくれるのならこれは大きい。二年前にも、ワイシャツの二重価格のことで動いてくれ、そのときには消費生活センターがすぐに動いた(相手はハイハイとそのときだけ従順にうなづき、結局また同じことをした)。組合が言えば行政が動くのだ。いい方向に持っていきたい。

 組合は若い人が来ないため、高齢者の集団だが、こういう人たちは放射性物質など平気。「放射能がなんじゃい!」という感じで、今日ばかりは頼もしく見えた。