野田村クリーニング店訪問取材

第二の仮設工場か?野村クリーニング店訪問取材

 image002

(ソルカンドライが搬入されたクリーニング店)

 仮設工場を巡る予算問題などが話題になっているが、仮設工場は岩手県理事の元工場に開設したものの、後になって岩手県九戸郡野田村でも予算の使用が発覚した。これについて、今まで全く何の情報もない。業界紙でさえ、全く伝わっていなかったという有り様である。野田村ではどのように予算が使用されたのだろうか?これは調べなければならない。編集委員会では急遽、野田村に車を走らせ、実態調査 を行った

 

野田村唯一のクリーニング店

 野田村に向かったのは3月31日、この日で東北道の高速道路無料措置が終了すること で、かなり混雑していた。九戸インターで降り一般道を走るが、ここから1時間半。かなり遠い。隣の久慈市も含め、大手といえるクリーニング業者が入ってお らず、手つかずの市場でもあるが、これだけ交通の便が悪いと、どこの大手も躊躇するのかも知れない。

 事前に岩手の同業者や取材業者から、予算の使われた業者の情報は得ていた。どうやらソルカンドライが入ったらしい。それ以外のことは、地元の業者達もわからない。

 野田村に入ると、問題のクリーニング店、Sを発見した。立派な店構えだが、作りはいわゆる個人店。店の背景には海岸線が見え、大きな被害をうかがわせた。

 私はアポなしで訪問、菓子折を渡して話を聞かせて欲しいと頼んだ。店頭には70を越えた人の良さそうなご夫婦がいて、突然の訪問には驚かれた様子だったが、話を聞かせてくれた。

 こちらのご夫婦はかなり前からクリーニング業を始め、現在に至る。3.11の津波では店舗部分の上の方まで水に襲われ、店舗、作業場はほぼ壊滅した。年齢のこともあり、後継者も後を継がず、一時は廃業を決意したが、人口4400人の野田村にクリーニング店はここだけ。周囲の強い要望により、再開を決断したという。住民の希望や必要性がある点で、国の予算を使う必然性は大船渡の理事長宅よりもはるかに高い。

 ただし、事業再建は自費を投入、自宅兼店舗の後ろに二階建ての作業場を作り、中古機を揃えていざ再開、となったところ、行政からストップがかかったという。この場所は近隣商業地域、一応石油系は使用できないのだ。この非常時に……と思うし、一軒しかないクリーニング店なら災害特例措置の資格十分、とも感じられるのだが、困って岩手県の組合に相談したところ、ソルカンドライを入れるといわれたらしい。したがってここでの予算はソルカンドライの導入のみに使用され、他の機材は自前で揃えたことがわかった。

 ただし、行政の措置は甚だ疑問である。理事長の工場も商業地で、行政から違反を指摘されていたのに現在も石油系で稼働されている。用途地域決定以前より操業のこの店がなぜ特例措置にならないのか?ともかくソルカンドライは導入され、事業は再開された。

 

ソルカンドライの効果

image004

(中央にあるのが搬入されたソルカンドライ機。12キロサイズで、三種類のうち、一番小さなもの)

 ひとしきり話を聞いた後、作業場を見学させてもらった。一階を作業場、二階をもの干場 にした木造の建物の中には22キロの水洗機、アイロン台、乾燥機と一緒に、厚生労働省の予算で導入されたソルカンドライ12キロが鎮座していた。バランス的に22キロの水洗機は大きいが、中古で急遽揃えており、仕方がないだろう。

 ずっと石油系を使用していたことで、「ソルカンドライはどうですか?」と質問した。店主はちょっと顔を曇らせ、「まだ使い始めたばかりでよくわからない」とのこと。また、「室外機などが多く、電気代がかなりかかるようになった。冬には凍ってしまう」とも言っていた。石油系を使い慣れた70歳の店主に、この新溶剤はもてあまされているのかも知れない。話の中では、石油系への未練タラタラの印象だったが、ここで余計なことはいわなかった。

image006

(ソルカンドライの室外機。これでは電気代もかかるだろうし、配管が煩雑で凍りやすく、寒冷地には不向き。温室効果ガスであることも合わせ、望ましいものとは到底思えない)

孤立するクリーニング店

 インタビュー中も近所の客が次々とやってきた。地元に密着し、親しまれているのを感じる。顧客からの期待は何よりとも思えるが、店主は「ソルカンドライは借用書を書かされている。いつ返せと言われるかわからない。これが返されたら、もう営業はできない」と不安になっていた。話の中で何度も「やめる」という言葉が登場した。これは、年齢的な不安とともに、大津波の壊滅的なダメージが事業を続ける意志をも蝕んでいるものとも思えた。救済はありがたいが、業者への説明が成されていない現実がある。

 厚生労働省からは予算が下りているわけだが、当初は「レンタル」と言われた仮設工場 は、いつの間にか無償貸与になっている。この業者も、「借用書」と書かされたというが、予算が下りて「借用書」とはどういうわけなのだろうか?税金で行われている話なので、真相を究明したい。

 ここで問題は核心へと迫る。被災地は三県にまたがっているが、救済措置の予算が下りたのはたった二軒だけ。なぜこの業者が優遇されたのだろうか。津波で流された業者は他にもたくさんいる。この業者だけ、はどう考えてもおかしい。 

これについて、岩手県の理事長宅の仮説工場について、公文書公開法により、どのように工場を開設したか調べてみた。平成六年にスタートした「現・仮設工場」は、近隣商業地域。開設時の書類では、単に「クリーニング作業場」とあり、ドライ溶剤の種類への記載はなく、工場面積も完全な違反。 これで許可が通ったのは、何らかの政治力によるものと思われる。一つは理事長宅で、岩手県ならさもあらん、とも思えるが、地方では県会議員などに頼み、無理強いした事例は多いらしい。しかし、この野田村の業者は純然たる「個人業者」。政治力を使ったとは思えない。

 「なぜ、救済措置が降りたのか」。私は率直に聞いた。本日の最大のテーマである。

 「何か、岩手県理事長とのつながりはないか?親戚とか……?」という質問には、夫婦 揃って首を振り、「そんなことはない」とのこと。行政から石油系がダメと言われ、組合に相談したところ、ソルカンドライの導入になったという。理事長との 因果関係には私以外にも多数言われているらしく、「またか」と困った表情を浮かべていた。ドライ機以外の設備を自費で揃え、使ったことのない機種が「レンタル」されたのだから、この業者には何の悪意もなく、むしろ気の毒に思えた。

 おおよそ聞くべきところは聞いたので、私は野田村を後にした。どんよりと曇り空の風景が広がり、明日から4月なのに雪が舞い散っていた。見送る老夫婦には今後もがんばっていただきたいが、改めて津波の脅威と、行政や全ク連の理不尽さを感じた。

 

全ク連は責任をとれ

 今回の取材について、まずこの問題は、村井宗明議員によって指摘され、初めてわかったことである。この業者のことも、執行された予算が発表され、初めて発覚している。税金から捻出された予算を使用するのに、それを一切秘密にした全ク連には悪意すら感じる。こちらは三度も記者発表に行って真意を正そうとしたが、担当者を次々変更してごまかし続けた。彼らには、国の予算を使用しているという自覚など微塵もない。税金を平然と無駄にし、なんらクリーニング業界に貢献していない。

 これで今回の執行予算(3400万円)の全貌がはっきりした。一つは大船渡の理事長宅の仮説工場。違法行為を国の金でごまかした悪質な物件を、地元紙は「復興への希望」ともてはやした。これぞ偽善の極地!見事に国の金を引き出した理事長はたいしたものである。

 次にこの野田村の業者。冷静に考えて、70を過ぎた人に新機種のソルカンドライはどうなのだろうか?地域住民の希望によって再会したのだから、災害特例措置で石油系にすべきではなかったのか?岩手の理事長は自分はシャアシャアと石油系を使用し、高齢者に不慣れな新機種を「押しつけ」たようで不愉快である。しかも、これは国民の血税で行われているのだ。よくいう「税金の無駄遣い」というやつ である。

 そして地元業者の話では、仮説工場開設について、地元機械業者は工場の配管のみを行い、機械の搬入は別の業者が行っている。本来であれば、地元に金を落とすべきではないのか?何か利権が絡んでいるようで、この点も不可解である。

 また、総予算が3400万で、大船渡が1400万、野田村が700万となると、設置費などを加えてもまだまだ予算が残っている。いったい何に使用するのかと思ったら全ク連の事務局長の「現地調査費」だという。全ク連は被災地を調査したといいながら、実際には最大被災地の福島県に来ていない。調査とは名ばかり、実際には国分町で遊び回っていたのだろう。

 最後に、この「仮説工場」は、地域にはなんら貢献していない。震災から約一年、各地で地元業者たちが自力で復帰し、地域のクリーニングを行っている。大船渡の仮設工場落成式では全ク連青山理事長が「地域の生活衛生を……」と、仮設工場の必要性を語ったが、そんなものウソ!地域ではとっくに別な業者たちが機能しており、一年後に工場を建てる必然性は極めて薄い。結局、本の限られた業者の救済にのみ役立っており、地域衛生になど何ら貢献していない。

 全ク連のシェアは、実際にはほとんどない。自らの利権体質がこのような異常な状況を作り出したのだが、なんら社会に貢献しない以上、国民の血税をこのような団体に使用するべきではない。もはや全ク連は形骸化した化石のような存在。税金の無駄遣いを繰り返すなら、そのことを、もっと世間に知らしめなければならない。厚生労働省も、早くそのことに気づくべきではないのだろうか?