地震日記:4月16日~4月30日

4月16日

 

時事通信記事

 改めて昨日の時事通信記事の件を考えてみると、東日本の避難所323カ所を調査したところ、洗濯できないところが151カ所もあり、厳しい状況が続いているということだった。洗濯もままならないというのである。

 これには大変問題を感じる。当社は現在でも避難所への無料クリーニングを行っているが、現在行っている須賀川アリーナ以外にでも、郡山ビッグパレットなどにも申し入れ、クリーニングの要望があったら御連絡下さいと言っている。先方の担当者は、「はいわかりました、よく検討し、御連絡致します」と返事をしたが、いまだになんの連絡もない。

 避難所の管理はその地域の役人が担当しているみたいだが、態度はいつも事務的だ。また、毎日担当者が代わり、引き継ぎもないので、翌日に趣旨が全く伝わっておらず、同じ説明を毎日繰り返している。須賀川アリーナは、避難民が他に移ったりしてどんどん減っているのに、クリーニングが増えている。これは、ちゃんと情報が伝達されていないからだと思われる。

 須賀川スポーツセンターでコインランドリーの無料券を配ったときに、そこの担当者に「一日に8人までにして下さい」と言ってチケットを渡したが、結局この人は、避難民10人にチケットを配った。全然人の話をきいていないのである。そこの避難者とも話したが、チケットを渡すために私たちが行った日に、ようやく洗濯機を設置したのだそうだ。電気も水道もずっと通っているところなのに、結局20日間も洗濯機を置かなかったのである。

 この間、洗濯機が品薄で手に入らなかったということはない。結局、避難民が苦しんでいる理由の一つに行政問題があるではないか?一歩下がっていえば、「無料クリーニング」や「コインランドリーを無料開放」というのは、こちらの申し出であり、他にはやる人もいないのだろうから、なかなか理解されないのは仕方ないのかも知れない。しかし、翌日の担当者に全く伝達しないというのはどういうわけだろうか?

 また、現在、避難所は電気や水道も通ったところがほとんどである。しかし、多数の人がそこで寝泊まりするのであれば、洗濯機が必要になるのは誰にでもわかるはずだ。それをしていない現場を私は確実に見ている。なぜそうなのだろうか?

 時事通信の報道がどのようなものなのか、記者に聞かなければわからないが、私は、避難所の担当者がもうちょっとちゃんと仕事をすれば、みんなもう少しましな生活ができるのではないかと思う。あの様な報道の根拠を時事通信に聞いてみたい。

 

 自宅隣の元工場(現物置)の店舗部分にかなりヒビが入り、壊れそうな ので、大工さんにお願いしてそこだけ(店舗部分)壊してもらうことを考えた。大工さんに連絡したら、20軒くらい待たせてあり、とてもそんな余裕はないとのこと。もし倒壊して通行人が怪我をしたら、と考えたのだが、こういう地震の場合には、補償するとかの心配はしなくていいとのことだった。それでも見積もりだけ出してもらうことにした。

 

ピアノと地震

 一昨日と昨日は比較的余震がなかったが、今日はちょっと大きいのが何回か来た。これで収束すると思っていたので残念である。

 私は二階の書斎にいた。下で娘がピアノを弾いていた。ショパンの幻想即興曲だった。こんなのが弾けるのかと感心していたら、地震が来た。演奏はいったん止まったが、地震が収まるとまた始まった。みんな地震に慣れっこになっている。

 

4月17日(日)

 

 日曜日で快晴の今日、須賀川市では桜がほぼ満開になった。桜の名所に行ってみると、こんなときでも出店が出て、みんなしっかり花見をやっている。勿論、人数も少なく、あんまり浮かれている人はいない。じっくりと桜を見ている印象である。わけのわからない放射能に脅えているよりも、せっかく咲いてくれた桜を楽しみましょうということだ。

 市内の桜の名所はいくつかあるが、自由が丘公園という所には、今まさに仮設住宅が建設されているところである。誰かがここに住み始める頃には、桜も散っているだろう。

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(桜と仮設住宅という、今まで見られなかった光景)

時事通信記事について

 時事通信の記事を受け、比較的親しい他のクリーニング業者二社に連絡し、同様なことをしてみないかと提案したが、岩手県の業者は「岩手県の避難所を見る限り、その様な必要性を感じず、大丈夫」とのことで、福島市の業者は「そもそもそういうことをできる環境が自社にない」と両方とも断られた。これは他社に理解がないというよりも、クリーニング業界にあって、こっちが特別の社風を持っていると考え、これ以上勧めても徒労であるとも感じた。二日前の夜には、時事通信の記事を見て、なんとかしないと・・・と考えたのだが、残念である。

 この記事について、本日、時事通信社にメールで連絡してみたが、すぐに返事が来て、

先日配信した記事は、政府が避難所の責任者 (これもたぶん役人)を対象に調査した結果をそのまま報道したものであり、時事通信の記者が避難所を取材して書いたものではありません。政府がまとめた数 字の裏に潜む背景への想像力が足りなかったと言われれば確かにそうですが、その辺の事情をご推察くだされば幸いです」とのことだった。避難所に洗濯機もないとすれば大変だし、お役人はそういう窮状も考えてくれないみたいなので、この問題は何とかしなければならない。

 

 被災者が困っている現状を考えると、各避難所には洗濯機を配置するように、いろいろな方法で促してみることは大切であると思う。

 行政の側にいる東京の知り合いにその件で連絡をしてみたが、「避難所の担当者がそんなことをわからないわけがない、避難民からの要請もあったはずだ。それは、洗濯機を置けない環境にあるからだ。きっと水も通ってないのだろう」という。

 これは事実でない。避難所は被災地ではなく、たいてい安全な場所にあるからだ。もうほとんどインフラは整ってきているので、そんなはずはない。被災地と中央では温度差がありすぎる。福島県で堂々と花見をしているのに、東京では自粛とか、放射能が怖い、と言っていることもある。もう少し考えて欲しい。本日は枝野さんが福島県に来たらしいが、ちょっこっと来ただけでは現実はわかってもらえないだろう。私はたまたまクリーニング業者だから、洗濯にうるさいだけで、他の問題などもいっぱいありそうで大変気になっている。

 

 本日から東北本線が再開したとのこと。私の家は線路に近いので、久々に信号の音を聞いた。しかし、走っている電車はかなりゆっくり・・・大丈夫なのだろうか?慣らし運転、ということだろうか?ともかく、一つ一つ回復しているのは嬉しい。

 

 本日は夕方から私以外の家族四人が郡山市の映画館に出かけ、ジャック・ブラック主演の「ガリバー」を見に行った。だんだん精神的にも余裕が出てきた表れかも知れない。

 

4月18日(月)

 

 本日は福島県庁から電話があり、県庁職員よりツイッターで当社の無料クリーニングがあることを知り、毛布を200枚ほど洗ってくれないかとの依頼があった。地震被害は粉塵の問題があり、それによって避難所の健康被害が起きているとのことだった。

 健康被害があるのなら、それはぜひやらなければならないだろう。この依頼を受けることにした。ただ、行政が「無料だから頼む」というのはどうだろうか?そういうことで始まった「無料クリーニング」ではないと思うが・・・。行政が、「無料なら頼む」という姿勢であるのは問題だと思う。

 

 日本テレビによって撮影された当社の試みが本日放送された。しかし、肝心の福島県ではやらないとのことで、私は栃木県の同業者を訪ね、そこで見せてもらった。この方は宇都宮を代表するシェアNo,1の業者で、自宅へ私を連れて行き、そこで、見せてくれた上に、DVDで録画してくれた(その上お寿司までご馳走していただいた)。全くありがたい。

 肝心の映像は、午後6時15分より始まった。避難所の無料クリーニングおよびコインランドリーの無料開放をする様子が出ていて、従業員に豚汁を作る私、従業員のコメント、私の家族の様子やコメントなども出ていた。まさに、ボランティアを行う私と会社のいいところばかり出ている映像だった。

 しかし髪の毛は、私の人生で最も長い状態だった。そろそろ切ろうと思っていたのに、出張が多くてなかなか切れなかったところに、この震災でいつもの理容店が休業、再開しても、予約待ちで行けなかったのだ。ようやく行ったときには、撮影は終わった後だった。あれを見て、ボランティアはいいけれど、この人の髪の毛は何なんだろうなあ、と思った人も多かったのではないだろうか?

 ともかく、あれを見て、避難所の洗濯の重要性を認識してもらい、どこにも洗濯機を設置してもらいたいものだ。避難所では洗濯がままならないという現実は確実に表現されていたと思う。そういう点が強調されていたのは実に良かった。今回は、企画していただいた会社に感謝するばかりである。

 あえて難をいえば、原発に対する意見をかなり長く述べていたのだが、それがすべてカットされていたことである。福島県民として原発被害のひどさを伝えたかったが、それができなかったのは残念だった。

 

 この映像のために久々に宇都宮まで行ったが、高速道路もあちこちデコボコだった。快適なハイウェイとは言い難い。震災の傷は深いと思った。

 

4月19日(火)

 

避難所へのクリーニング

 避難所へのクリーニングについては、私がいくらがんばったところで、東日本に300以上もある避難所の人たちの面倒を全てみることはできない、行政は全然理解がない・・・と心配していたところで、今日は動きがあった。

 本日は南相馬市に行ったが、道中のラジオで、岩手県へ静岡県のコインランドリー業者が、デモンストレーション用のトラックでサービスしたとのこと。多分東静電器(クリーニング業者用の機種を製造販売する会社だが、最近はコインランドリー事業に力を入れている)である。住所で私たちはわかる。

 大変素晴らしい試みだが、いかんせん、洗濯機一台と乾燥機二台程度のデモ機では、一時間に二人分が限度。10時間いたって20人しかできない。熱心な試みに対して失礼だが、これではあんまり意味がないんじゃないだろうか。

 しかし、その後のニュースでは、宮城県は避難所向けに洗濯機を850台用意すると報じられた。すごく嬉しかった。こっちの気持ちが通じたようだ。

 それにしても時間がかかり過ぎだ。

 

南相馬市のコンビニ

 本日は南相馬市でがんばる同業者を訪問することになった。業界紙の二人と行く予定だったが、時間が合わず別々に行った。私は二本松インターで高速を降り、川俣町、飯舘村という放射能数値の高い地域を通って行った。高速を降りると山地に入り、峠を二つ越えていくほどの山道で、折からの雨天は途中でみぞれになった。これで山道を行くのだから本当に大変だ。

 問題の南相馬市は原発から半径30キロの範囲。街に入ると、商店街はほとんど店が休業状態。やっているところは20軒に1軒程度だ。地元商店街、量販店の区別なくその調子である。

 その中で、必ずどこでもやっているのが大手コンビニだった。他のコンビニがことごとく閉店しているのに、相変わらず照明を光らせてがんばっている。

 がんばっている・・・などといえば聞こえは良いが、何でここだけみんな開店しているのだろうか?他のコンビニがみんな完全閉店なのに、これは大変不思議な現象だ。

 まさかとは思うが、何だか、無理矢理やらされているような気もした。そのうちの一軒に入ってみたが、従業員がみんな家族みたいな気がした。雇われている雰囲気がない(気のせいかも知れないが・・・)。品数も豊富とは言えなかった。

 避難地域だというのに・・・もしかしたら、本部から強制されているのでは・・・。そんなことはないと思うが・・・。

 

南相馬市のクリーニング業者

 本日は午後1時に昔からの付き合いがある業者のお見舞いに行った。早く着いたので海岸沿いに行ってみたが、田んぼに船があったり、テレビや雑誌で見たとおりの光景があった。

 ここは社長が女性の方で、当社とはきものクリーニングの関連で親しい。半径30キロ以内ということで、もし必要であるなら、うちに来て下さい、みたいな話も提案した。

 しかし、たとえ半径30キロ範囲でも、ここを離れる意志はないのだという。父親が根を下ろし、今まで培ってきた商売を離れることはできないのだというのだ。

 その気持ちはわかる。そういわれれば、何も言えない。話の中で、街の中にカラスがみんないなくなったという。理由は、犠牲者がたくさんいるからである。捜索する人はカラスを目安に犠牲者を捜すのだという。リアルな話だ。

 女性の社長と、きもの部門を担当する妹さんとその息子の後継者、そしてお母さん(もう80歳以上)にお会いしたが、これだけ地域に根を張った業者が、自然災害ならともかく、人災によって生まれ育った土地を離れることはできないのだと思った。これは切なすぎる話だが、この地域は歴史もあり、そう考えるのは当然だ。今回の原発騒動について、ここの家族は怒りをあらわにしてい た。

 私は自分も被災者なので、お金を持っていくのも変だと思い、レトルト食品、カップラーメン、缶詰などを二つの箱に買って持って行ったが、北洋舎では、本店店舗に「被災者の方、どうぞ」ということで食料品などを置いておき、顧客が自由に持って帰れるようにしていた。本来はご家族のために持って行ったはずなのだが、私の「支援物資」も、当たり前のようにそこに置かれた。この期に及び、あくまで顧客第一主義を貫いている。

結局ここへは午後1時頃から4時までいたが、帰りに見たら3分の2くらいなくなっていた。お客様が持って帰ったのだ。食料品を売っているのは、強制的に営業させられている?コンビニくらいしかないので、みんな困っているのは間違いない。お役に立てて嬉しい。

 

双葉町・大熊町に原発ができるわけ

 原発はここから南にある大熊町、双葉町にまたがってあるのだが、福島県の中心部にある福島市や郡山市からこの地域に来るためには、どのようにしても阿武隈山地を越えてくるしかなく、険しい山道を通って来る以外には方法がない。

 この日の帰りは、来るときの道が険しかったため、相馬市に行ってそこから福島市に抜ける道を選んだが、結局そこも来たときよりもさらに険しい山道で、おまけに季節はずれの雪によって吹雪となり、大変な思いをした。二年連続で桜に雪が積もる光景を見た。行きも帰りもかなり辛い旅だった。正直なところ、あんまり行きたくない地域である。

 この様に、原発のある双葉町、大熊町は全く不便で、東京からだと、かろうじて海岸線を通って来ることができる。単なる海岸線で、漁場に有利な入り江があるわけではなく、他の地域に漁業では勝ち目がない。地理的にはまったくどん詰まり。不便この上なく、際だった産業もない地域だ。

 何もないところで、原発開発に目を付けられたのではないだろうか?ここの人たちなら、何の産業もないし、言うことを聞くだろう・・・開発者の本音は、安全性ではなく、そこの地域の人々が説得しやすいことを基準に原発を置いているのか、と思った。浜岡や柏崎もそうなのだろうか?青森の六ヶ所なんて絶対そうだろう。

 でも、ひとたび原発が事故を起こせば、全然関係のない地域にまで被害が及ぶ。今回の問題は、短絡的な開発によってもたらされたのではないだろうか?目先の金に・・・人間の感情は昔から変わらない。しかし、その背景にあるものは、文明の発達によって大きく変貌しているのだ。

 

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4月20日(水)

 

保健所

 昨日、福島県中保健所がボランティアクリーニングを続ける須賀川アリーナに来て、なにやら指導をしていった。下着を預かる場合には、80度で煮沸消毒しろとか、そういうことである。

 私は呆れてしまった。彼らの振りかざす法律というものは、彼ら曰く、「戦時中」にできたものなのだ。大日本帝国憲法から日本国憲法に移行する際、こういう項目の改正は行われなかったらしい。とても現代に通用する法律とは思えず、日本のどこにも下着を「80度で煮沸消毒」している人はいないだろう。ダニ、ノミ、シラミとか多かった時代の話である。

 おそらく、当社の試みをテレビで見てやってきたのだろう。クリーニング業者がやっていることを見ると、とにかく存在感を示すため、一言、言っていきたいのが彼らの性分だ。この非常時に、何を言いに来たというのだろう?

 クリーニング業は厚生労働省の管轄で、直接には保健所が見回っているが、何十年間にも渡り、ホームクリーニング業で衛生上の問題が発生したことはない。そもそも保健所が管轄であることがおかしい。しかし、そこには厚労省の天下りとかいろいろな利権があり、現実に全くそぐわない状況が続いているのである。

 当社営業部長は、「それでは、保健所の指導により無料クリーニングは中止致します、としましょうか?」と言ったら、保健所職員はあわてて「いや、法令に合わせて指導をおこなっただけです」などと言ったらしい。自分たちの存在感は出したいが、嫌われるのはイヤだ、というわけだろう。

 こちらとしては、おそらく避難者の衛生状態が保てない、として始まったことなのだが、保健所はそれにも口を出してくる。行政が追いつかないから私たちがフォローしているともいえるのだが、保健所は、「法律はこうです」というわけだ。彼らの目的は、とりあえず行きました、という記録を残すこと。それが有益であるとか、避難民の健康を保つことに貢献した、などという成果には何ら関わらない。

 こういうこともあり、今回の地震に関わる問題については、「お役所仕事」の問題点を感じている。コインランドリーを無料で開放した避難所では、まずは最初の4日間に8名ずつという話をしたが、今日になって持ってきた人がいたらしい。現場の判断により、困っている人を拒否はできないから、それを受けたとのこと。

 私は、4日間に8人ずつ受けてみて、もしまた要望があったら続けますよと伝えたのである。ところが、そんな話は全く伝わらない。誰にでもわかるようなマニュアルでも作成しないと理解されないだろう。

 

4月21日(木)

 

風評被害

 ニュースによると、福島県の人は風評被害で周りからひどい目に遭うらしい。福島ナンバーの車だと周りからいろいろ言われたり、福島県だとホテル宿泊を断られるという。

 本当は4月14日に上京する予定だったが、11日、12日に震度5の余震が5,6回あり、結局断念していた。上京していたら、何か問題があったのだろうか?

 試しにそういう風評被害というのがどんなものなのか、一度経験してみたい気がする。どんなことを言われるのか、自分で試してみたい。特に、東京電力の事故で被害に遭い、その電力の恩恵で生きている人たちがどんなことをいうのか、聞いてみたい。

 東北の人は我慢強いからこの被害にも耐えられるのだという。私は例外だと思う。いろいろ言われたら、黙ってはいられない。いっそテロリストにでもなってみようか?

 昭和29年の映画「ゴジラ」では、原水爆実験によって安住の地を追われた太古の恐竜が、文明社会への復讐のため東京を襲うというストーリーだった。ゴジラの気持ちでやってみようか?だんだん腹立たしくなってきた。

 

コインランドリー無料の問題

 昨日は当社ロックタウンのコインランドリーにおいて、時季外れのサービス券を持ってきた避難民がいたが、この問題が後を引いてしまった。無料で引き受けたのはいいものの、そのコインに他の避難民がいて、その人は有料で利用していたらしい。その人は他の避難所にいるとのことだが、無料枠を広げなくてはならない可能性も出てきた。確かに、「何であんたが無料で、オレが有料なん だ」という気持ちはわかる。

 少しでも役に立てれば・・・ということで始まったコイン無料だが、軒並み満杯で、特に大玉村のコインはほぼフル稼働だ。その中での無料開放はきつい。何か別の方法も考えないといけない。

 

市役所福祉課

 昨日は保健所とのもめ事があったが、本日は市役所福祉課から連絡があった。どうやら保健所が福祉課に連絡したらしい。

 福祉課のスタンスとしては、やはり困っている人たちのため、無料クリーニングは続けて欲しいとのこと。配送に苦労している旨を告げたら、先方で工場-避難所間の配送も検討するとのことだった。いい人もいるなあ。

 

 この日は夜にも余震があり、午後10時半、午前1時10分頃に揺れた。特に後の方は震度5くらいに感じられ、家から家族が飛び出した。まだ落ち着かない日々が続く。

 

4月22日(金)

 

資材業者来る

 本日は午後からクリーニングの資材業者がやってきて、いろいろ話をした。クリーニング業界は、資材業者が富山の薬売りのように全国を巡り、注文を受け、情報交換などをするのである。今までは高速道路も新幹線も止まって来ることもできなかったが、ようやくやってきたのである。

 この人の話では、この地震によってかなりの業者が打撃を受け、苦しい状況になっているとのこと。コインランドリーの経営者だけは今までよりも売上が上がり、喜んでいるのかと思ったら、意外とそうでもないらしい。水源が水道のため、断水して営業できないところとかが多いのである。

 クリーニングはサービス業なので、発展し、生活の充実した文化的な生活を前提としている。確かにこの様な状況では苦しいのだ。廃業する業者も出てくるだろう。

 

柏崎刈羽原発の不安

 夜になり、新潟に住む大学時代の先輩から自宅の電話に連絡が来た。この人はNTTに勤めているので、やたらと電話をかけてくる。

 この日は原発の話題が出た。この人の家は柏崎刈羽原発から10キロの所にある。福島第一原発の事故を受け、柏崎刈羽原発の安全性について調査したところ、津波については3メートル程度しか想定していなかったそうである。それじゃあ危ないわけだ。電話してきたのは、そのことを言いたかったかららしい。

 福島原発の事故により、各地の原発の安全性が確認されている。その中で、各地の原発でのズサンな安全対策が露呈している様だ。津波はいつも近年に起こった最高値が目安とのことだった。それじゃあ、千年に一度の地震に対応できないわけである。結局、その程度の話により、地域の人々の安全性を脅かしていたというわけだ。たまったものじゃない。

 

ひばく星人

 福島県民の生活にほとんど貢献しない東京電力の原発事故により、放射能被害の風評被害を受けている私たちであるが、ここ須賀川市は、「特撮の神様」円谷英二の出身地として知られている。その円谷英二が設立した円谷プロダクションは、数々の作品を世に送り出しているが、昭和42年の「ウルトラセブン」は、その代表作でもある。

 このウルトラセブンの中で、第12話「遊星より愛をこめて」は、現在でも欠番となっている作品である。その理由は、ここに登場する「スペル星人」は、自分の星で核物質により被爆した「ひばく星人」という位置づけになっているからだ。小学館の「小学二年生」に登場したところを誰かに見つけられ、被爆者に対する差別であると抗議され、円谷プロもそれを受け入れ、欠番となってい る。

 円谷プロスタッフには勿論悪気はなかったのだが、それが広島や長崎で被爆した人たちの感情に触れるものであることがわからなかったのである。現在でも欠番となっているのは、良識の表れであるとも思える。

 私たちは、それが意味するものがほとんどわかっていなかった。作品自体は正式には見られないものの、ネットには出回っていて、かろうじて見ることができる。私も小学2年生の頃、かすかな記憶でリアルタイムで見たことも覚えている(私は怪獣ファンだったから)。これがなぜ、欠番になってしまうかわからなかった。

 そして、それから40年以上の時を経て、自分で経験してやっとわかった。放射能や被爆ということは、かなりの風評被害があるということを・・・。ああ、こういうわけだったのだ、と。

 原発の恐怖も、事故が起こってからでないとわからなかった。被爆した人たちのことも、こうやって福島県にいて初めてわかったのだ。教えられることは多いと思う。

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(スペル星人)

 

4月24日(日)

 

 昨日はこの地震日記を一日休んだ。

 昨日は雑誌「F」の編集長がやってきていろいろ話をした。編集長は、多くの雑誌が沿岸沿いの悲惨な状況に集中している中、原発の放射能や風評被害によってかなりの打撃を受けつつある福島県の中通り、会津地方をルポしたい様である。それは当方にとってもぜひ主張したいことである。

 「東京の人は、今夏、クーラーが動かなくなるんじゃないだろうか、とかばかり心配している」という話を聞き、ここと東京ではかなりスタンスが違うことを実感した。

 

 先週より自宅の近くを走る東北本線に電車が戻ってきた。近くの踏切音が聞かれるようになったが、電車のスピードがことごとく遅いせいか、今までのような大きな音がしなくなった。この地震を機に線路を整備し、音がしなくなったのか、単にゆっくりだから音がしないのか、その辺はわからない。

 

会津の風評被害

 宮城県などの中学生は、学校の旅行で会津若松が行き先になるのだそうだが、昨日のニュースでは、この会津若松市に対する旅行にキャンセルが相次いでいるという。ニュースを読むと、「父兄が福島と言うだけで嫌がる」のである。とんだ嫌われ者になったものだ。

 原発からの距離では、仙台と会津若松は両方ともほぼ100キロくらいで、ほとんど変わらない。仙台が海岸線に近く、原発との間に山地などもないのに比べ、会津若松は阿武隈山地、奥羽山脈が障壁となっている。風向きによっては仙台の方がよほど危ないはずだ。

 それなのに、「福島」というだけでキャンセルとなるのだ。ものすごい迷惑であり、まさに風評被害そのものである。無知としかいいようのない父兄からの言葉に、教育者である先生方が簡単に屈するのはナンセンスであり、文化的ではないと思う。

 

アレルギーの避難民への対応

 「食物アレルギーの子、被災地からSOS」というニュースを読んだ。大勢の人びとがいる被災地には当然、食物アレルギーの子供達がいるものだと思うが、そういう子供達を支援する団体が被災地にアレルギー用食料を運搬しても、そこに山積みになっているだけで、配られていなのだという。現場の担当者がそうする理由は、「ニーズがない」、「把握するだけの余裕がない」だそうで ある。

 何だか、私たちの「ボランティア・クリーニング」に似ている話である。避難所にずっと大勢の人がいれば、洗濯のニーズが出てくるに違いない。それを申し出ると、「まだ寒くて洗濯しない」、「着替える下着がない」、「誰かがやると、他の人もオレもオレもとなり、混乱するから平等を保てない」など、否定する言葉だけ出てくる。人間がたくさんいれば、いろいろな事情が出てくるだろう。洗濯などは人間の生活の、当たり前の営みで、欠かせないものであり、アレルギーの人は、必要な物資がなければ、それこそ命に関わる問題となる。避難所の管理においても、非常時で大変なのはわかるが、もう少しフレキシブルに動いてもらわないと困るだろう。どうも「面倒くさい」が最優先されている気がする。

 

東北電力の先輩

 本日は、学生時代の先輩である人に電話をしてみた。東北電力に勤めている上、女川原発が職場である。

 今回連絡したのは、昨日連絡してきた別の先輩が、原発に勤めているのだし、一度連絡してみては・・・ということだった。

 

 話は、おおむね以下のようなものであった。

 

 私は東北電力ではあるが、東電の問題で迷惑をかけ、申し訳ない。現在は、女川原発に地震以来ずっといる。ここに留まっている理由は、ここは原発であると同時に現在も地域住民の避難所にもなっているからである。いつまた大きな余震が起こるかわからず、安全を帰すために原発から離れられない都合がある。また、避難民の面倒を見なくてはいけないのだ。

 原発はテロなどの危険を防ぐため、それ自体が厳重な管理化にある。その中に避難民が住んでいるので、異様な光景になっている。4月7日には大変大きな余震があったため、避難民を高い場所に誘導した。自分自身も服を着たまま寝ていて、救援物資として送られた毛布で寝ている。シャワーくらいなら浴びることができる。近くに寮があるが、現在でも電気も水も来ていない。(かなり大 変な生活を、3月11日以来送っているのだということがわかった)

 

 (そっちの原発は事故にならなかった様だが、という話に対し)女川原発は3基の原発があるが、地震や津波があっても事故を起こさず、安全が保たれている。ただし、いつ再開するかわからず、今後の見通しが立たない。

 東京電力については、地震に対する備えが悪かったと思う。電力会社にもコンサルタントが入るが、東電にもそれがあり、安く上げていたようだ。安全対策という点では足りなかったと思う。(原発にもコンサルタントがいることがわかりビックリした。では、私たちはコスト削減のコンサルタントのため、日々、苦労しているというわけか?!クリーニング業界にもヘンテコなコンサルタントがたくさんいるが、安全第一でなければならない原発にもいたなんて・・・実名で公表して欲しい)

 

 噂では、東電は賞与は半分カット、東北電力も何らかの影響は受けるだろう。日本の電力会社従業員はすべて、今回の不祥事に関するダメージを受けることになる。

 

 今回の原発事故に関しては、マスコミはひどい。おもしろおかしく危険を煽っている。この女川原発にもマスコミはやってくる。最初から記事に書くことが決まっていて、嘘ばかり書いている。

 

 (他に発電方法はないのかとの質問に対し)原発が一番ローコスト。これ以上、効率よく電気を作れる方法はない。ただし、何かあったら一番危ないことも事実だ。

 今夏については、気温次第だと思うが、気温が一番上昇するときには電気は足りなくなるだろう。

 

(私たちは安全なのか、に対し)福島原発の20キロ圏外であれば大丈夫。よくテレビとかでいろいろ言っているが、体には何ら問題のないレベルだ。

 

ということだった。先輩も相当苦労しているみたいだ。

 

地震被害について

 今回の大地震については、現実には地震そのものの被害については、あまり大きくはなかった様である。なぜか震源地からそれなりに距離のある、福島県中通りにおいて、人造湖の堤防が決壊して民家を襲ったり(須賀川市)、山崩れによって生き埋めになった人がいたり(白河市)と、私の周りではかなりの建物の倒壊などもあり、ひどい被害なのだが、岩手や宮城ではそれほどでもなかったみたいだ。とにかく、東日本のおよそ半分の地域を襲った津波と、その津波によってやられた原発が大きな問題になった様だ。

 先日訪れた南相馬市でも町並みにそれほどの被害はなく、今日の電話でも仙台市もさほど問題がないらしい。とすると、原発も含め、本当にこの「津波」がとてつもない災いをもたらしたようだ。

 

4月25日(月)

 

郡山の悲観論者

 昼間、高校で応援団の先輩であるI氏と電話で話した。郡山在住、会社員である。

 この方の主張は今まで話した人たちの楽観論とは真逆、「既に私たちは放射能に犯されている」というもの。「逃げたくても他では食っていけないので逃げられないじゃないか」ということで、もしかしたら郡山市にはこういう悲観論者が多いのかも知れない。

 昨日は東北電力社員である先輩から「大丈夫」といわれたばかりだが、本日は「危ない」。放射能については、何とも言えない。どっちを信じて良いのかわからない。ただ言えるのは、大半の福島県民に、逃げるという選択肢がないことである。

 

コンサート

 私の会社では2008年と2010年にクラシックのミュージシャンを呼んでコンサートを開いている。そのプロモーションの会社の人と話したら、あちこちでコンサートがキャンセルになった上、外国人のミュージシャンが日本に来たがらないので、先の見通しが立たないとのことだった。外国人とかかわりのある商売は、露骨に原発被害を受けている。外国人ともなると、福島県どころか 日本に来たがらなくなる。私たち以上に影響を受ける職業である。

 

タンクローリー玄葉問題

 新聞を見ていたら、高校の後輩でもある玄葉光一郎(国家戦略担当相)が、地震の後、ガソリン不足の時期に、自分の選挙区にだけタンクローリーを走らせ、地域のガソリン確保を行ったと騒いでいる。週刊誌などもこの話題を大きく扱っている(私が最初に見たのは東京スポーツ)。もし事実であれば、自分の地位を利用した利益誘導だったというわけだ。

 しかし、ローリー車を廻したというのは、事実かどうか、わからない。 同じ選挙区である須賀川市には、そんなにタンクローリー車が来てはいないからである。ガソリン欠乏時、車はどこでもすさまじい台数でGSに並んでいたし、 郡山市なら入れられる、などという噂も出ていた。須賀川市が玄葉の恩恵を受けたとは思えない。選挙区というのではなく、船引町、自分の生まれ故郷にだけ ローリー車を廻したのだろうか?もし利益誘導があったのなら、そういうことだろう(ネットで確認したが、疑われているのは田村市ばかりの様だ)。(注:こ れは最初週刊誌で騒がれたが、その後、ほとんど問題にならなかった。ガセネタではないかと思う)

 

ロータリークラブ会合

 本日は夜に地元の須賀川ロータリークラブの会合があった。地震でしばらく中止になっていたものだ。今日は花見を兼ね、宴会付き。震災後初めての宴会である。いつもの会場は震災で入れず、唯一無事だった別のグランドホテル(中心部からちょっと離れている)というホテルで行われた。

 この席で、須賀川RCは姉妹クラブの台南北RCから義援金200万円を受け取り、そういったお金で洗濯機100台を購入し、須賀川アリーナや郡山ビッグパレットに配ったという。これにはビックリした。知らない間に私の希望 叶えてくれていたのだ。しかも、須賀川ばかりか隣の郡山市にまで・・・。

 

佐藤栄佐久前知事について

 今日のロータリーの中で面白い話を聞いた。

 前福島県知事の佐藤栄佐久氏は、収賄の疑いで逮捕されたが、それは福島原発に関わるプルサーマル計画に反対したため、それを推進している国の恨みを買ったからだといわれている。

これについて、佐藤前知事は現職時代、別学が当たり前だった県内の高校を一律に共学にし、自らの母校である安積高校もそれにならって女 子も入るようになった。これについてはOBの大半が反対する中、共学を強行したことで佐藤知事に対する反感が強まり、霞ヶ関に点在するOB達も佐藤前知事 には味方しなくなり、それが知事の辞任や逮捕につながったというのである。ちょっと怪しい話だが、同じ高校出身の私にはわかる気がする。

 

4月26日(火)

 

会議

 当社の定例会議が久しぶりに行われた。3月は震災で中止、二ヶ月ぶりである。

 私は冒頭に挨拶し、地震で従業員がみな無事であり、良かった。これだけの大震災はないし、原発問題なども起こっているが、私たちはクリーニング業、お客様に清潔をお届けするのが使命であり、今こそがんばろうと述べた。当社は今後、放射能と闘うという前代未聞の苦戦を強いられるわけだが、社長がキリリとしないといけない。

 3月の売上は・・・本社で昨年の約半分!工場が数日間停止したほか、店舗がいつまでも開店しなかったのが大きい。大変なダウンである。しかし予想されたことだ。日本テレビの画面で映った現実だが、改めて知るとまたガッカリする。

 地震のタイミングはクリーニング業者にとって最悪だった。クリーニングは3月後半から繁忙期を迎える。売上のある時期をそっくり持って行かれた形になった。しかし、4月は意外と健闘しているので、この調子で復活してくれればありがたい。

 従業員達から現場の話を聞くと、同業者のダメージが当社より大きく、そちらから品が流れている点が売上につながっているらしい。それならいいのだが、やはり雨の日は格段に売上が下がるとのこと。みんな放射能を気にして外出せず、それが売上ダウンにつながっているのだと思う。「雨の日は、外に出るな」が合い言葉になってしまった。

 昔からクリーニングは雨の日が苦手で、雨の日は売上が下がると言われていた。「雨の日サービス」といい、雨の日には2割引するようなサービスも行って、下がる入荷をカバーする試みも各地で行われていた。しかし、これでは本当に打つ手なし。この時期に雨の日サービスなどやったら顰蹙(ひんしゅく)ものだ。

 

ブラームス

 3月11日以来、一度も外泊しないので、前よりは家族の話なども聞ける。息子は高校に通い出し、地震の影響で、時刻通りに走らないJRで通っている。なかなか大変のようだ。

 しかし、ずっと家族といるので気詰まりする。本日は自室に閉じこもっているが、ブラームスの交響曲1番(フルトヴェングラー指揮、1951年10月27日、北ドイツ放送交響楽団)を聞いていた。

 ブラームスを聴くなら、フルトヴェングラーでないとダメだ。他の指揮者には全く感銘しない。特に一番のこの、楽譜よりもずっと遅いテンポにした独特の雰囲気はすごい。まるで辛い人生をかみしめながらも前進していくのだ、というようなメッセージが聞き取れる様だ。他の指揮者は早すぎていけない。スキップするようなペースでは、この、重苦しい人生を語れない。フルトヴェング ラー指揮のブラームス交響曲第一番は6種類持っているが、この北ドイツ放送交響楽団版が一番好きである。バンバンと強打するティンパニが、私に対して「こら、甘えるな、人生は闘いだ、負けるな!」と叱咤激励している様である。

 

地震

 本日の地震は昨晩から震度3のが何度か来ている。午後9時のは初期微動がものものしく、雰囲気的に大きいのが来るのかと家族も感じていたようで、みんな居間に集まったが、結局震度3で終わった。家族も最初の揺れの印象で、これは大きくなる、これは大したことないなど地震の規模を予測し、「利き地震」みたいな感じになっている。しかし、ここ最近は震度4以上の大きな地震がなく、揺れもだいぶ少なくなった。この調子で収束して欲しいものだ。

 

SF

 本日は会議の場所が二カ所あり、買い物をして会社に寄らず、直接帰ったため、午後6時からCSで「新スタートレック」をみることになった。本日はピカード艦長率いるクルーがSOS信号を受けている星を救出に向かうという話だった。

「被爆」という言葉が当たり前のように出てくる。空想科学の世界では当然のことなのだ。福島県民に襲いかかる現実は、昔の人びとがSFで何度も何度も予期していた言葉だったのだ。

世界中の多くの人びとは、原子力時代を迎えるに当たり、そういうことが将来は核戦争にせよ原発事故にせよ起こりうることだと予期してい たのだと思う。原子力の脅威はかなり知れ渡っていたはずである。それでも、使用するのが当たり前であるかのように原子力の開発は進められ、「平和利用」の 言葉通りに世界で動いている。

福島県の事例が示すとおり、実際には「説得しやすい」、「貧しいから金で動かしやすい」場所を選んで原発が建てられたのは明白である。 危険のリスクを負わせる時点で差別が生まれていた。これを許すわけにはいかないが、その上で、「福島ナンバーの車は入ってくるな」などという問題が起きる のであれば、ただごとでは済まされないだろう。

 

4月27日(水)

 

スポニチ

 本日は朝からスポーツニッポン(スポニチ)の記者が取材に来た。あまりに毛色の違うマスコミからの取材だったので、てっきり私の学生時代のプロレスでも取材されるのかと思ったが、スポニチにも社会部があり、やはりボランティアクリーニングのことだった。

 

大学准教授

 読売新聞の記者により、ボランティアに積極的な准教授がいるというので、紹介してもらった。近々お会いする予定である。

 この方は、こういう非常時に被災地での洗濯をどうするか真剣に考えている人で、今回の問題を学者としての立場から考えているというのである。

 クリーニングを科学する、ましてや被災地でのクリーニングを学者として考えてもらえるのであれば、これ以上のことはない。会うのが楽しみである。なんか全然理解者がいなかったのに、光明が見えたような気がする。

 基本は「困っている人を助ける」である。それが、実際に震災があった場合、十分に機能していない。これは、将来のためにも解決するべきである。クリーニング業者として大変やりがいを感じている。

 

放射能測定値

テレビを見ていたら、相変わらず本来の画面の外側に被災地情報が出ているが、最近はもっぱら放射能測定値が出ている。これは、全国でこ うなのだろうか?福島県だけこうなのだろうか?これは自然災害ではなく、明らかに人災なので、何とかして欲しい。バラエティもエンジョイできない。いつで も福島県民は放射能から離れられないとしたら、本当に困るではないか。

早めに上京し、例えば繁華街や飲み屋に行き、「福島県民ですよー」と言った場合、どういう対応をされるのか試してみたい。

 

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(通常の番組の外枠に出る県内の放射能測定値)

 

4月28日(木)

 

会津若松市の対応

 当社には会津にも工場があり、会津地域のコインランドリーもかなりの売上があり、避難民が利用している現実があるため、先日会津若松市長宛てでメール連絡し、中通りで行っているような無料クリーニングを行ってもいいと伝えた。

 翌日、会津若松市災害対策本部から連絡があり、「避難場所の統合と各場所に洗濯機を設置しているのでせっかくですがご辞退したい」という丁寧なものだった。

 洗濯機が設置してあれば、ほぼ問題がないだろう。ただ、こっち(須賀川、郡山)のように、地震から一ヶ月以上放置していたというのではないかと聞いてみたが、「4月初旬には洗濯機は配置されていた。地元商工会議所が入れてくれた」ということで、こっちよりは対応が良かった様だ。さすがは戊辰戦争などを経験している地域、災害時の対応はなかなかだ。市長に連絡すると、すぐに下に伝わるというレスポンスの良さもたいしたものだ。

 

アスベスト

 環境問題を扱う知り合いに、今回の地震について、津波や原発問題によってあまり表面化していないが、地震の被害によって建物のアスベストがわき上がり、特に避難民を苦しめているという話を聞いた。倒壊したり、地震に揺さぶられてヒビの入った建物から建設時に使用されたアスベストが出てきたのである。

確かに数日前、県庁から毛布を200枚洗って欲しいという要望があったが、これは地震で落ちた粉塵により、避難者が健康被害を引き起こしているから、ということだった。最初は何を言っているのかと思ったが、アスベストのことだったのだ。

 アスベストの問題もバカにできない。原発と同様、人災といえるだろう。

 

フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)

 本日、書店に週刊金曜日を買いに行ったら、東宝特撮映画のDVDが売っていて、「フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)」というのを買ってきた。子供の頃、親に連れられて見に行った映画である。

 ナチスドイツは密かに弾に当たっても死なないフランケンシュタインの研究をしていたが、敗戦濃厚になり、それを日本に託した。ところがフランケンシュタインの心臓が持ち込まれた広島に原爆が投下され、この心臓が異常な発育を遂げ、騒動を巻き起こすという奇想天外な話である。

 原発をベースにしている特撮映画は多いが、これもそうで、冒頭は病院で原爆症に苦しむ病人の姿が写し出される。こうならないと良いが・・・。何度かこの日記で特撮映画のことを書いているが、日本の特撮映画は核兵器、放射能、原水爆などがベースになっているものがほとんど。しかし、40年も過ぎて現実になるとは思っていなかった。

 

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4月29日(金)

 

同級生の苦悩

 同窓生から消息を尋ねる電話があり、「高校以来だなあ」などと話をした。正直、こういうのが多くて疲れる。

 しかし、彼の話は深刻だった。郡山市の大手酒造会社社長も同期だが、手広くやっているこの会社も、韓国、中国へ出荷停止になったという。さらに須賀川市内に二つの病院をかまえる医者に同級生がいるが、この人は浜通り地域から大勢の病人を自分の温泉病院へ避難させた結果、心筋梗塞で亡くなってしまったという。いわゆる「過労死」である。同窓生の中にも刻々と被害が寄せられて いる。

 高校時代、一緒に汽車通した同級生の死は、厳しい時代を意識させるものとなった。虚しい。残念だが、立派な死だ。尊敬する。

 

ビッグパレット

 連絡のあった福島大学の准教授と会うため郡山ビッグパレットに行った。県内最大の避難所だけあって、たくさんの人がいた。

 外側に洗濯室を設け、洗濯機が並んでいたが、10台の洗濯機の他に、さらに10台追加しているところだった。いずれも同じ機種の二槽式洗濯機で、あまり市場に出回っていないこの製品が20台も揃っているのは不思議な光景だった。二層式は洗いと絞りが別々で、私たちのようなプロには便利な品だが、洗濯の間ずっと張り付いていなければならず、現代では家庭向きとは思えない。

 また、家庭用の電気式タンブラー乾燥機もやはり20台ほどあった。自由に洗濯物を干せない場所だけに、この設備は望ましいが、それにしても電気式タンブラーとは不思議である。電気式はものすごく電気がかかる上、乾燥の上では非効率的である。2,3台までくらいならそれでも良いのだろうが、20台を全て電気で・・・となると、いったいどれだけ電気を消耗するのだろうか?ガス式の方がはるかに熱効率が良いのだが・・・。おそらく、猛烈な電気料金がかかるだろう。原発がダメになったときにこんな伝記をいっぱい使う乾燥機を入れるとは・・・なんだか皮肉だ。

 どういう事情でこうなったのかわからないが、私たちがみれば、首をかしげざるを得ない洗濯室である。各地から集まった寄付の品であればそれも納得がいくが(売れ残った品ばかりだとか)、誰かがお金で買ったとなると、とんでもない間抜けな話になる。

 

准教授

 福島大学のT准教授という方は、災害時の活動について研究しているが、特に避難所のクリーニング施設のことを気にかけているようなので、この日お会いすることになった。本人は東京の業者を呼ぼうと思っていたらしいが、地元に私たちがいるのに、何も東京から呼ばなくてもいいのでは・・・ということである。

 T准教授は名刺を切らし、この地震により印刷所で新しい名刺を作ることができず(あるいは忙しすぎてその余裕がない?)、自分の名刺をコピーした紙を渡された。最初、私たちの取り組みをずっとお話しし、これまでの流れを説明した。話の内容はおおむね以下の通り。

 ボランティアで避難所のクリーニングをやっているのに、保健所が来てわけのわからない理屈をこねていく問題(行政との悪いコミュニケーション)については、T氏が厚生労働省に話し、柔軟な対応ができるようにするとのこと。

 ずっと無料でやっているが、T氏は無料のままでは大変なので、何らかの方法で選択料を払えるようにしたいということだった。

 青森から秋田まで避難所はたくさんあるが、いずれはこういった動きを他でもやるべきで、その際はクリーニング業界の協議会などを通じ、他の業者にも働きかけていきたい。

 また、ビッグパレット近隣に近々当方がオープンするコインランドリーについて、避難所の家族全員にコインランドリーのプリペイドカードを進呈するという遠大?な計画を話した。こういうことはこれから開店するコインランドリーだからできる話だが、T氏の様な方がいてくれて大変嬉しかった。

 

古い友人

 夜になって東京在住の古い友人が帰ってきて、少し酒を飲むことになった。彼は故郷の悲惨な状況に驚いていた。

 東京ではコンビニなどもかなり品薄が続いていて、水のボトルも一人一本までとかだという。東京では乾電池があまり手に入らないので、こっちで買いだめしていくのだとも言われた。被災地の我々は優遇されているのだろうか?意外な話に驚いた。

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(ビッグパレットに並べられた二層式洗濯機と電気式乾燥機)